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【好事例】奈良県警の「ハリボテオービス」について思うこと

この記事を書いた人
yotaro

警察歴8年、元某県警の巡査部長。
結婚を機に転職し、今は別の仕事をしています。
警察に興味のある方や、警察官試験に興味のある方向けに情報を発信しています。
実際の現場で経験した「リアルな声」をお届けしたいと思っています。

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こんにちは、元警察官のyotaroです。

普段は警察不祥事ばかり記事にしていますが、今回紹介するのは奈良県警の好事例です。

このオービス、実は「ハリボテ」です…「通行車の速度落ちた」と好評

 奈良県警吉野署が、持ち運びできる速度違反自動取締装置(可搬式オービス)を模した<かかしオービス>を運用している。紙製の張りぼてだが、製造元にも許可を得た見栄えで、見かけて速度を落とすドライバーも。署は一定の抑止効果があるとして今後も活用する考えで、「(取り締まり可能な)本物の場合もあるので、常にスピードは控えめに」としている。(遠藤絢子) 【写真】使用されている可搬式オービス(本物)

 23日午前、大淀町内の国道309号で、トラックや乗用車が速度を落として走っていた。ドライバーの視線の先には三脚付きの白い箱(高さ59センチ、幅28センチ、奥行き35センチ)。可搬式オービスそっくりの見た目をした「ダミー」だという。

 可搬式オービスは自動で車速を計測し、速度超過を検知すると、ナンバーやドライバーを撮影する仕組みで、違反者には後日通知が届く。その場で停車させる必要がある通常のレーダー式装置での取り締まりと異なり、通学路や生活道路など比較的狭い場所で、少ない人員による取り締まりが可能で、2016年から全国で運用されている。

 県警は19年1月に導入し、現在は3台保有。今年は6月末までに可搬式による取り締まりを205回行い、計557件の違反車両を撮影して検挙対象とした。

 ただ、可搬式オービスの一つ「LSM―300」は1台約1100万円。容易に台数は増やせず、3台の装置を県内12署で運用しているため、各署の使用順は2、3か月に1度ほどしか回ってこないのが現状だ。また、通常の取り締まりには署員4、5人が必要で、小さな警察署では大きな負担になっていた。

 そこで考案されたのが、ダミーだった。今春、吉野署の若手交通課員2人が「本物そっくりの偽物を使うのはどうか」と提案。製造元の東京航空計器の許可も取り、3か月かけて製作した。厚紙にラミネート加工を施した箱形で、黒く塗ったカップ麺の容器をストロボ部分に見立てるなどした。実物にうり二つの外観で、走行中の車からだと見分けがつかないという。

材料は全て署内で調達し、かかった費用は「0円」。片手で持ち上げられるほどの重さで、1人でも対応が可能になった。吉野署はこのダミーを7月に初運用。これまでに2回使用したところ、取り締まりを実施した地域の駐在所に、住民から「通行車両のスピードが落ちた」との声も寄せられ、効果が出ているようだ。署は今後も実物と並行して使用していく考えだ。

 吉野署管内では今年、死亡事故2件が発生している。北川真也交通課長は「実物の順番を待たずに使えるのがいい。県南部は狭い道やカーブが多く、スピードさえ抑えていれば、助かったのではないかという死亡事故も過去に起きている。これを機に安全意識を高めてほしい」と話している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7790a60f29302c8d982001ef57a3186b3e6453a6?page=1

移動式オービスのダミーを作成運用し、ドライバーの速度超過を抑制することが出来たという記事ですね。

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そもそもオービスを増やしたら?といった指摘について

可搬式オービスは高額で数を導入するのが難しい

記事内でも言及のあるとおり、可搬式オービスは1台約1100万円もします。

警察の予算は融通が利かないため、そうそうオービスを増やすことはできません。

奈良県警では3台のオービスを12署で共有しているとのこと。

 ただ、可搬式オービスの一つ「LSM―300」は1台約1100万円。容易に台数は増やせず、3台の装置を県内12署で運用しているため、各署の使用順は2、3か月に1度ほどしか回ってこないのが現状だ。また、通常の取り締まりには署員4、5人が必要で、小さな警察署では大きな負担になっていた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7790a60f29302c8d982001ef57a3186b3e6453a6?page=1

定点式の交通取締りには人員も必要

オービスやレーダーを活用した取締りには、ある程度まとまった人数の警察官が必要になります。

また、オービスやレーダーは交通課で研修を受けた人しか使用できないため、警察官なら誰でも良いというものでもないのです。

コストを削減しつつ警察目的を達成できる素晴らしい発明

警察の目的は、交通違反を取り締まることではなく、交通事故を減らし国民の生命を守ることです。

交通違反の取締りは、目的達成のための手段にすぎません。

今回の奈良県警吉野署の若手警察官の発明は、限られた予算の中で最大限の効果を発揮できる素晴らしい発明だと思います。

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警察官には組織内のアイデアコンテストがある

余談ですが、警察組織にはこうした創意工夫・アイデアのコンテストがあります。

今回の発明も、そうしたコンテストの一環で発表されたものなのかもしれません?

警察は予算の確保が難しい→創意工夫で何とかしよう

yotaroの現職中からそうでしたが、警察の予算は確保が難しいようで、何か問題が生じた場合も現場の工夫とマンパワーで乗り切ろうとします。

よっぽど人大きな問題がおきない限り、新しい装備品などの予算はつきません。

例えば近年、拳銃が強奪される事件がありましたよね。

それ以前から、拳銃ホルスターから拳銃を奪われる可能性があることは、想定されていました。

しかし、大きな事件が発生するまでは、警察官の訓練で拳銃奪取を防ぐことが対策のメインでした。

拳銃を奪われて死亡する犠牲者が出てようやく、拳銃のホルスターを奪われにくいものに変える動きが出てきました。

基本的に、「金がないから知恵を出せ」といった組織風土です。

素晴らしいアイデアには本部長賞などの奨励の対象に

今回の発明は、実際の効果や社会的反響が大きいこともあり、奈良県警本部長賞は固いでしょう。(もう既にもらってるかも)

ひょっとしたら、上位機関である警察庁からの表彰もあり得るかもしれません。

yotaroも現職中、発明品コンテストに応募しましたが、かすりもしませんでした(笑)

奈良県警吉野署の若手警察官、それに関わった吉野署の皆様に改めて拍手を送りたいと思います。

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