こんにちは、元警察官のyotaroです。
今回解説するのは、
「ハトをひき殺した疑いでタクシー運転手が逮捕された事件」です。
内容は下記のとおりです。
ハトひき殺した疑い、運転手逮捕 「道路は人間のもの」と供述
2023/12/05
東京都新宿区の路上で、運転するタクシーでハト1羽をひいて殺したとして、警視庁新宿署は5日までに、鳥獣保護法違反の疑いで、東京都中野区のタクシー運転手小沢敦史容疑者(50)を逮捕した。署によると、容疑を認めており「道路は人間のもので避けるのはハトの方だ」と供述している。
逮捕容疑は11月13日、新宿区西新宿1丁目の路上で、カワラバト1羽をひいて殺した疑い。
署によると、小沢容疑者は、停止線の先頭で信号待ちをしていた際、青信号に変わって急発進し、前方の直線道路上にいた数羽のハトに突っ込んだという。当時客は乗せていなかった。
近くにいた通行人の女性が110番した。
© 一般社団法人共同通信社
https://nordot.app/1104576525622281026?c=39550187727945729
この事件、だいぶセンセーショナルな報道がされていますね。
「鳩をひいただけで逮捕になるなんておかしい!」
とか
「虚構新聞のネタじゃないの?」
なんて意見もネット上では見受けられます。
【編集部】「ハトをひき殺した疑いでタクシー運転手が逮捕された」いう記事について、本紙報道とのご指摘をいただいておりますが、これは現実のニュースです。ご了承ください。 https://t.co/x2GfC01Uxd
— 虚構新聞速報/編集部便り (@kyoko_np) December 5, 2023
確かに、
「鳩を引いただけでなんで逮捕までいくの!?」
といった感想を持つのもわかります。
しかし、よくよく考えてみれば逮捕も納得の事件です。
以下解説していきます。
交通事故は「過失」があることが前提
そもそも今回の事件は、交通事故ではありません。
今回の事案は、車を用いて鳩を殺した事件です。
事故は「過失」があることが前提です。
例えば、車で人をわざと引き殺したら、過失運転致死傷の罪ではなく、殺人の罪に問われます。
車を凶器として用いて、人を殺したということです。
本件は交通事故ではなく鳥獣保護法違反になる
「鳩を見落とした」などの過失があって鳩を轢き殺した場合、罪に問われることはありません。
しかし、今回は鳩がいるのが分かった上で、わざと轢き殺しています。
よって、事故ではなく鳥獣保護法違反の罪に問われるわけですね。
被疑者の供述からも、交通事故ではないことが明らか
一見してこのタクシー運転手、不服そうな供述をしていますが、「過失=事故ではないこと」を十分認めています。
署によると、容疑を認めており「道路は人間のもので避けるのはハトの方だ」と供述している。
https://nordot.app/1104576525622281026?c=39550187727945729
鳩を認識したうえで、急発進して轢き殺したわけです。
供述からも故意性は十分出ていますね。
目撃情報からも、急発進して轢き殺す状況が認められるので、故意性が十分認められますね。
運転中、誤ってハトなどの野生動物をひいたら罪になるのか?
このニュースを受けて、だいぶ悪い反響が出ています。
「運転中にハトや野生動物を引いたら逮捕される!」
なんて極端な情報で拡散されてしまっています。
しかし、今回のタクシー運転手のように、故意に動物を轢き殺したことが証明されない限り、罪に問われることはまずありません。
過失でハトやタヌキといった野生動物を引いてしまった場合は、物件事故として扱われます。
なんなら今回の事件、目撃者がいなければ、何にもならなかったであろう事案です。
むしろ、通常こういった事案を鳥獣保護法として立件するのは相当困難で、第三者の目撃や運転手自身の故意性、客観的な証拠が揃わないことにはまず立件できません。
このような事件があったからと言って、運転におびえる必要は全くありません。
また、警察による公権力の濫用でもなんでもなく、成立すべくして成立した事件です。