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【広島県警不祥事】警備課長「カラ出張」事件 背後にある警備・公安の隠ぺい体質

この記事を書いた人
yotaro

警察歴8年、元某県警の巡査部長。
結婚を機に転職し、今は別の仕事をしています。
警察に興味のある方や、警察官試験に興味のある方向けに情報を発信しています。
実際の現場で経験した「リアルな声」をお届けしたいと思っています。

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(R6.2.10 ※読者様よりご指摘の箇所を修正しました。大変失礼いたしました。)

こんにちは、元警察官のyotaroです。

昨年末、広島県警元巡査部長の告発により、広島県警警備課長らが「カラ出張」で旅費を不正受給した詐欺事件が明らかになりました。

旅費の不正受給というと何ともけち臭い話に聞こえてしまいますが、実はこの不祥事、背後にはもっと大きな問題が隠されているのです。

報道ではカラ出張ばかり取沙汰されていますが、その背景にあるもっと大きな問題について取り上げていきます。

私自身、警備部門の経験があるため、今回の不祥事は非常に興味を惹かれました。

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カラ出張はかつて裏金作りによく使用されていた手口

かつて裏金があった時代には、「カラ出張」が定番の裏金作りの手法だったと聞きます。

警察改革以降、こうしたカラ出張は根絶されたものと思われていましたが、未だに組織ぐるみでやっているのは驚きでした。

50歳代の警備課長の指示のようですが、今まで何度も不祥事防止の教養を受けてきたでしょうに、不祥事で処分される同僚を何人も見て来たでしょうに。

警備部門って一定数こういう化石みたいな人が居るんですよね(笑)

本当にヤバいのは捜査費の不正支出疑惑

しかし、旅費の不正受給レベルの不祥事なら正直大した話ではありません。

粟根巡査部長の告発は、もっと大きな問題に切り込んでいます。

もっと問題になるべきなのは、捜査費の不正支出疑惑の方です。

「広島県警の不正の認定がおかしい」「捜査費が明らかにされてない」元警察官が実名で訴えたことと無念の思い

(前略)

この日の会見で粟根さんが強調したのは、以下の点だ。

① 送検容疑など県警が認定した事実は自身の経験と大きく食い違う

② 監察官室は自分の公益通報より先に届いた告発文書の内容をカラ出張の中心人物だった警備課長に漏洩し、その結果、証拠隠滅や口封じが行われた

③ 不正の全容は明らかにされていないし、とくに捜査協力者に渡ったはずの「捜査費」の行方が確認できていない

「広島県警の不正の認定がおかしい」「捜査費が明らかにされてない」元警察官が実名で訴えたことと無念の思い|SlowNews | スローニュース
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捜査費の不正支出疑惑の内容

報道では「カラ出張」に関する不正受給ばかり取沙汰されていますが、これは本件事案の矮小化だとすら思います。

それくらい、捜査費の不正支出は問題であると考えます。

警備警察と捜査費(捜査協力費)

今回カラ出張で処分をされた警察官は、警備課長以下3名、いずれも警備・公安部門の警察官です。

警備・公安の役割は、主に国の治安維持に関わる情報収集活動です。

情報収集活動には様々な手法がありますが、最も主流なのは警察協力者を作り、情報源とすることです。

警察協力者には、情報提供のお礼として、捜査費から謝礼を支払います。

今回は、その謝礼を支出してないにも関わらず、支出したと見せかけて金をだまし取った疑惑があるのです。

疑惑というより、カラ出張で協力者と接触した体裁で捜査費を支出しているので、ほぼクロでしょう。

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なぜ捜査費の不正支出が起こりうるのか?

通常、捜査費を支出するには、事前にも事後にも署長への報告が必要になります。

事前には、捜査費を支出する計画書等を提出。

事後には捜査費によって得られた対価(情報ないし資料)等を報告します。

しかし、ベテランの警備課員にもなってくると、情報提供者から話を聞かなくても、ある程度自分で想像して、あたかも協力者から聞いてきたような内容の報告書を書くことが可能です。

今回の事件も、おそらくそういった手法で署長へ虚偽の報告を続けていたのでしょう。

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どうすれば捜査費の不正支出を防げるか?

不正を完全に見破るには、会計管理者ないし署長が、捜査協力者に連絡をして、正しく金品を受領したか聞くくらいしかないでしょう。

しかし、警備部門は、秘匿性を重視する部署であり、それをすることは困難です。

捜査協力者は、立場上の危険を冒して、警察に情報提供をしてくれています。

そのことから、捜査協力者に関する情報は、厳に秘匿しなければいけません。

不正支出を防ぐには告発しかない?

仮に、担当の警察官以外に自分の情報がバレ ているとなると、一気に協力者との関係が崩壊してしまいます。

そもそも、秘匿性重視の警備部門と、会計監査の考え方が真っ向から衝突するのは明らかです。

なんなら、

「警備の金は警備で好きにやるからヨソにぐちぐち言われる筋合いは無い」

くらいに思っています。

私自身、警備をやっていたこともあり、秘密主義になる理由もよく分かります。

しかし、組織として、こうした不正を闇に葬ろうとする姿勢は本当に許せないですね。

不正を防ぐには、今回のような内部告発を繰り返していくしかないのでしょう。

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刑事2課の介入を拒む警備・公安部門

粟根部長の証言で、本件詐欺事件は刑事2課ではなく公安課が捜査を担当していることが判明しています。

詐欺容疑なのになぜ2課ではなく公安が捜査を?

ところで、書類送検に至った今回の事件捜査は警備部公安課が担った。詐欺容疑などは普通、刑事部の刑事2課が担当する。これについて、粟根さんは捜査費の絡みがあったのだろうと述べ、次のように説明した。

刑事2課が本来やるべきだと思います。今年(5月には広島でG7)サミットがありました。正直なところ、事件体制は取れるはずはない。ものすごく忙しかったと思います。 そんな中で、わざわざ、なぜ公安課か? それはひとえに、刑事2課に行くと、多分、徹底的に調べていたと思います。これ、国費の捜査費が動いている事案なので、全てが(部外者に)聴かれてしまうと、非常にまずい というのがあって、そこを突いてほしくなかったんだろうと私は考えています

「広島県警の不正の認定がおかしい」「捜査費が明らかにされてない」元警察官が実名で訴えたことと無念の思い|SlowNews | スローニュース

そもそも公安課は詐欺事件の担当ではありませんし、そういった事件捜査のノウハウもありません。

おそらく、警備・公安が捜査2課、刑事部門の人間が介入することを拒んでいるのでしょう。

警備・公安部門の思惑は何か?

広島県警の警備公安部門は、

「本件を事件としてやる気がない」「旅費の不正受給だけでお茶を濁そうとしている」

と見られても仕方がありません。

相当ひどい隠ぺい体質であるとも見えますが、警備・公安に肩入れするのであれば

「協力者との関係だけでも守りたい」

という思惑が働いた、と考えることも出来ます。

こうした事件で、協力者にまで捜査の手が及ぶとなると、他の警察協力者も協力に及び腰になることが考えられますからね。

警備部全体として、今後の仕事がやりにくくなることを恐れているのでしょう。

ひょっとしたら、本庁(警察庁)公安からもこ何らかの指示を受けているかもしれません。

本庁からのトップダウンであれば、広島県警の捜査2課も引き下がるしかないでしょうからね。

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捜査費の不正支出疑惑は広島県警だけの問題ではない! 粟根部長の告発を無駄にしてはいけない

こういった捜査費の不正支出、露呈するのは氷山の一角にすぎません。

現に、私が居た県警でも、警備部の人間で捜査費の不正支出の疑惑がある人間が居ました。

その者は、協力者との関係構築が失敗したにも関わらず、接触したと称して捜査費を何回か不正支出していました。

しかし、公には何の処分も受けず、警備部内で間に葬られた、との話です。

私自身は警備部の末端であったことから、噂レベルでしか知りませんが、その件に関わった警察官たちは、粟根部長のように内部告発をすることはせず、保身と組織防衛に専念したようです。

誰しも、自分の身が可愛いですからね。

自身の身を顧みず、公益のために告発した粟根部長の精神こそ、正しい警察官の姿であることは言うまでもありません。

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