こんにちは、元警察官のyotaroです。
先日ネット上で、交通事故に遭われた方が「警察はなぜ物損事故にしたがるのか?」といった趣旨の書き込みを見つけました。
警察の怠慢ではないか、との指摘もあります。
事故当時者の方に不信感を抱かせてしまう時点で、警察としては問題ですね。
しかし、警察側として、「できれば物損事故に収めたい」という気持ちもよく分かります。
今回は、なぜ警察官が人身事故にしたがらないのか?
考えられる理由を何点か紹介します。
そもそも人身事故にするorしないとはどういうことか?
「人が怪我をした時点で人身事故じゃないの?」
「人身事故にするとか、しないとかどういうこと?」
と思った方、当然の疑問ですよね。
物件事故(物損事故)と人身事故の違い
物件事故(物損事故)と人身事故。
読んで字のごとく、物の壊れだけなのが物件事故で、人が怪我をすれば人身事故になる、と考えるのが自然ですよね。
しかし、警察の交通事故の取り扱いでは、事故当時者が怪我をしていても、診断書の提出が無い限り物件事故として扱われます。
診断書を提出することで人身事故の扱いになる
交通事故の見分終了後、病院からもらった診断書を警察署の交通課に提出することで、人身事故としての取り扱いになり、本格的な捜査が始まります。
人身事故、罪名で言うと自動車運転処罰法の「過失運転致死傷罪」の捜査ということですね。
物件事故の捜査であれば、通常その場限りの簡単な見分で終わります。
しかし、人身事故の捜査になると、追々事故当時者が警察署に出頭し、取り調べを受けたり、再度事故現場での詳細な見分を行うことになります。
その後、起訴されれば過失運転致傷罪の罰則を受け、尚且つ点数が加算されてしまいます。
なお、事件としては不起訴であっても、行政上の罰として点数は加算されてしまいます。
警察が人身事故にしたくない理由1 お互い丸く収めるため!
警察が人身事故にしたくない理由の1つに、発生した交通事故を丸く収めたい、と考えているケースが考えられます。
二台の車が走行中、何らかの原因で衝突してしまった事故があるとします。
双方の運転手が、肩に軽い痛みを訴えています。
ここで、双方がそれぞれ、警察署に診断書を提出してしまうとどうなるか?
片方の当事者のみ起訴されたり、行政罰の対象となることはほとんどありません。
双方が過失運転致死傷罪の被疑者になり、刑事罰や行政罰の対象になってしまうのです。
交通事故は、片方が停車中であったり、交通違反が絡んでくる事故を除き、双方に何らかの過失が認められるケースが多いため、お互い何らかの処罰を受けてしまいます。
こうしたケースでは、お互いの運転手にとって非常に不利益になるため
「お互い診断書を出さない方が良いのになー」
と警察側は考えます。
このことを、事故現場で動揺している当事者にどう上手く伝えられるか?
警察官の技量にかかってくるところです。
警察が人身事故にしたくない理由2 人身事故にすると統計上よくないから!?
人身事故にしたくない理由として、人身事故にすると警察署の統計上良くない、という極めて警察側の都合の理由もあります(笑)
各警察署は、死亡事故や人身事故の発生件数を抑えるために、日々交通取締りや交通教室を行って交通マナーの向上に努めています。
いわば、事故の発生件数は、少なければ少ないほど警察署の交通課の実績になるのです。
ちょっとした怪我で診断書を出されてしまうと、交通課の実績としては良くないわけです。
こんな理由から、事故当時者に診断書を出さないように勧める警察官がことは、言語道断です。
診断書を出すか否か 迷ったときは
交通事故に遭われた方で、自分に過失が無く、怪我も軽い状態で診断書を出すかどうか迷っている。
そういった場合は
・相手のドライバーが誠意を持って対応してくれたか?
・怪我の治療まで面倒を見てくれるか?
を判断基準にしましょう。
相手に誠意が見られず、物件事故であるが故に病院の治療費の支払いを渋るようであれば、人身事故にしてしまうのが良いと思います。
警察側が嫌がろうと、診断書を出すべきです。