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自転車の交通違反に青切符が導入される件について考えてみる【現場警察官レベルの視点】

この記事を書いた人
yotaro

警察歴8年、元某県警の巡査部長。
結婚を機に転職し、今は別の仕事をしています。
警察に興味のある方や、警察官試験に興味のある方向けに情報を発信しています。
実際の現場で経験した「リアルな声」をお届けしたいと思っています。

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こんにちは、元警察官のyotaroです。

最近、自転車にも青切符を導入することを検討しているなんてニュースがありました。

自転車の悪質な交通違反 反則金制度の導入検討へ 警察庁

自転車の悪質な交通違反が後を絶たないことから、警察庁は、自動車やオートバイのようにいわゆる「青切符」による取締りを行う反則金制度の導入を検討することになりました。
実効性のある取締りにつなげるのが狙いで、導入されれば、身近な交通手段のあり方の大きな転換点となります。

https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20230803/1000095497.html

「自転車のマナーが良くなるならどんどん取締るべきだ」

という意見や

「警察による税金搾取だ!」

という批判の声もあると思います。

難しい制度的な話はさておき、実際に自転車に対して反則切符を告知するようになったらどんなメリットやデメリットが考えられるのか。

実際に取締りに従事する立場である、現場の警察官目線で考えてみたいと思います。

まずは、前置きとして現在の自転車に対する交通違反取締りの運用を経験を交えてお話します。

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前置き 現在の自転車に対する交通取締りの状況

おそらくどこの県警、警察署であっても、自転車への交通違反取締りには積極的ではありません。

自転車の交通違反の処理は、どんな軽い違反であろうと赤切符を用いて行います。

赤切符は、自動車であれば通常、悪質な交通違反に対して使用される様式で、

・飲酒運転

・無免許運転

・大幅な速度超過

等の時に使用します。

赤切符=重い交通違反というイメージの方が多く違和感を持つ方も多いでしょう。

警察側も同様で、自転車の違反に対してわざわざ赤切符を使用することはほとんどありません。

私自身、自転車の交通違反を赤切符で処理したのは、よっぽど悪質な違反である飲酒運転のみです。

自転車の無灯火、一時不停止といった軽微な違反を赤切符で処理した経験がある警察官は極めて少ないでしょう。

自転車の交通違反はだいたいが指導警告(罰則が適用されない)止まり

自転車の交通違反は、 ニュース記事内でも言及のとおり、だいたいが指導警告措置で終わっています。

自転車の交通違反の取締りは、多くは罰則を伴わない専用のカードを使った「警告」が行われているのが現状で、去年は全国でおよそ131万件でした。
悪質な違反には交通切符、いわゆる「赤切符」が交付され、刑事罰の対象として検察庁に送られることになっていて、去年全国で「赤切符」などで検挙されたのは2万4549件でした。

https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20230803/1000095497.html

指導警告措置は、基本的に何の効力を持たない、 現場限りの注意指導のみです。(県警によっては、指導警告何回で赤切符処理にするところもあるそうです。)

本来道路交通法で定められている罰則規定はまず適用されません。

例えば、自転車の無灯火は本来5万円以下の罰金が科せられます。

しかし、実際に警察官から注意されたことはあっても、罰金を支払ったことがある人はほぼ居ないでしょう。

自転車の交通違反、赤切符処理の流れ

指導警告で済ませてはいけないような悪質な違反(飲酒運転)に対しては、赤切符を作成して処理します。

赤切符が交付されると、後日裁判所に出頭して簡易的な裁判が行われます。

そこで罰金が確定し、指定された金融機関に罰金を収めることになります。

青切符と違い、いちいち裁判所に行かなくてはならないため、違反者側としても非常に面倒です。

自転車がほとんど罰せられないのは、今まで可罰性が低いと見られていたことや、以下に挙げる交通反則通告制度の適用から除外されていることが原因だと考えます。

交通反則通告制度とは?

現在青切符で処理されている交通違反は、本来は道路交通法違反被疑事件として、事件化の手続きをしなければならないものでした。

信号無視や指定場所一時不停止違反も、本来であれば事件化して裁判所での手続きをしなければならなかったのです。

しかし、それではあまりにも警察官と違反者双方に負担が大きいため、事件化を不要とし反則金の納入をもって終わり、とした制度が交通反則通告制度です。

自転車の交通違反に対しては、この交通反則通告制度が適用されていないため、簡単に交通違反を取り締まることができない原因の1つであると言えるでしょう。

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自転車に青切符を適用することで想定されるメリット

それでは、実際に自転車に対して反則切符での取り締まりが導入されたらどんなメリットがあるのか。

現場警察官のレベルで考えてみます。

自転車利用者のマナーが改善される 交通事故が減少する

自転車での交通違反に反則金が取られるとなれば、当然運転手は気を付けて運転することが予想されます。

自転車の利用者で、ちゃんと一時停止の標識で止まっている人はほぼ居ないですよね(笑)

道路の右側だろうが左側だろうが、歩行者がいる歩道だろうがお構いなしの自転車が多いですよね。

こういった自転車が交通ルールを守ることで、かなり交通事故の抑止につながります。

今回反則切符を適用するのもこれが一番大きな目的でしょう。

反則金の徴収により道路管理の財源が増える

交通反則通告制度が適用されることにより、自転車の交通違反も裁判を経由せずに反則金を徴収することが可能になります。

交通違反の反則金は、道路管理の予算にあてられます。

自転車の交通違反をどの程度のレベルでやるのか不透明ですが、良い財源になるのではないでしょうか。

自転車に対して職務質問がしやすくなる

これは完全に現場警察官の視点ですが、 自転車利用者に対する職務質問がやりやすくなります。

今までは看過していた自転車のマナー違反等も、法改正をきっかけ取締りやりやすくなりますね。

「交通マナーの指導を端緒にして、所持品検査などに持っていきやすいな」

等と現場レベルでは考えます。

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自転車に青切符を適用することで想定されるデメリット

自転車に青切符が導入されることに伴うデメリットはどんなものが考えられるでしょうか。

警察官の業務量が純粋に増える

純粋に交通反則切符を作成する、処理する仕事が自転車の違反の分増えることになります。

反則切符(青切符)は現場で作成して終わりではありません。

図面や取締り状況の記載、データの入力等警察署でやる事務処理があります。

さらに、処理が終わった切符は、交通課の取締り担当の警察官が全て点検をすることになります。

業務量増加による現場の負担増加は避けられないでしょう。

新たに自転車交通違反の検挙目標≒ノルマが課せられる

警察官には交通取締件数の検挙目標値があります。

自転車が交通反則切符の適用となれば、自ずと新たな目標値≒ノルマが課せられるのは想像に難くありません。

ノルマ達成のために、ネズミ捕りに励む警察官が出ることが予想されますね。

警察にノルマは存在するのか? 努力目標がノルマに変貌する理由【元警察官が解説】

自転車絡みの通報やトラブルが増える

自転車に対しても青切符が適用されることにより、自転車の交通マナーに対する市民の目が厳しくなることが予想されます。

潜在化しているトラブルの種が、表面に出てきやすくなる可能性があります。

あおり運転が厳罰化された件を例に挙げてみます。

あおり運転が社会問題になってから、 あおり運転に関する相談やトラブル通報件数は増加しました。

しかし、社会問題化する以前にも 車でのあおり行為は存在していました。

昔は「煽られたら避けてやり過ごす」という回避策が多くのドライバー間で共有されていました。

しかし、煽り運転の厳罰化や報道の過熱に伴い、

煽られた=通報する

という思考になったドライバーが少なからずいます。

通報は決して悪いことではありません。

ただ、トラブルの内容によっては、必ずしも白黒つける必要があるものばかりでは無いように思えるのです。

煽られたことに対して反応せず、ただ避ければ終わりだった話もあるはずです。

こうした例からも、自転車の厳罰化がきっかけで、自転車に関する交通違反の通報やトラブルの相談が増えることが考えられます。

自転車は免許が不要であり、老人から子供まで誰でも乗れるので、トラブルのネタはそこら中に転がっています。

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自転車に青切符が適用されることに対する感想

想定されるメリットとデメリットを考えてみましたが、実際のところはやってみないとわかりません!(笑)

私自身は自転車の交通マナーの悪さを苦々しく思っていたため、青切符が導入されることに関しては大賛成です。

反則金を徴収することに対する国民の理解など、現場レベルでは間違いなく苦労するでしょう。

しかし、交通事故の抑止という観点から見れば間違いなく効果はありそう?なので頑張ってほしいですね。

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