こんにちは、元警察官のyotaroです。
年末に兵庫県警で不祥事の発表がありましたね。
今回の不祥事は「当て逃げ事件の捜査が面倒で防犯カメラの捜査を怠ったため」とのこと。
処分については「警務部長訓戒」になったとのことです。
当て逃げ事件の捜査「面倒だった」警察官3人、口裏合わせ「防犯カメラなかった」
事件現場近くに防犯カメラがあったのに、映像の確認を怠り、捜査資料に「カメラはなかった」と虚偽の記載をしたとして、兵庫県警はいずれも但馬地域の警察署勤務だった30歳代の男性巡査長と男性巡査部長を虚偽有印公文書作成・同行使などの容疑で地検に書類送検し、同僚だった30歳代の男性巡査部長とともに警務部長訓戒の処分にした。送検と処分は11月14日付。
3人は「捜査が面倒だった」と話し、いずれも別の警察署に異動した。
県警によると、3人は3月28日、車の当て逃げ事件の捜査を担当。現場周辺に防犯カメラがあることを確認したが、映像を見るにはデータを保存している関東地方の会社に向かう必要があることがわかり、口裏を合わせて捜査資料に「防犯カメラはなかった」と虚偽の記載をした。
3人は被害者にもカメラはない、とうその説明をしたが、被害者が「現場にはカメラがある」と県公安委員会に苦情を申し立て、不正が判明した。カメラのデータはすでに消えており、容疑者は特定できていない。
当て逃げ事件の捜査「面倒だった」警察官3人、口裏合わせ「防犯カメラなかった」|読売新聞オンライン
以上のような内容でした。
今回は、
実際に当て逃げ事件捜査の何が面倒なのか?
警務部長訓戒とはどの程度の処分なのか?
について、元警察官の視点からお話しします。
当て逃げ事件捜査 防犯カメラの映像確認って面倒なの?
今回の警察官の不祥事、当然ですが厳しく処分されるべきものであるとは思います。
ただ、「防犯カメラ捜査が面倒だ」という気持ちは分からなくもありません。
正直なところ、よほど防犯カメラの性能が良く、車の色、型式、ナンバーが鮮明に映し出されていない限り、捜査をしても徒労に終わるケースがあります。
また、防犯カメラの捜査にしても、ただ直接設置しているお店にお願いすれば見せてもらえる、という簡単なものでもありません。
カメラを設置している事業所、店舗などが非協力的な場合(良くあります)「捜査関係事項照会書」という照会文書を、その事業所の本部あてに送り、そこから回答が来て初めて防犯カメラの閲覧が可能になります。
その間早ければ2週間、遅ければ数か月程度でしょうか。最悪の場合、その間に証拠となる映像が失われていることもあります。
今回のケースもまさに同様のケースで、しかも関東地方の会社まで直接赴かないと行けなかったとのこと。
県警によると、3人は3月28日、車の当て逃げ事件の捜査を担当。現場周辺に防犯カメラがあることを確認したが、映像を見るにはデータを保存している関東地方の会社に向かう必要があることがわかり、口裏を合わせて捜査資料に「防犯カメラはなかった」と虚偽の記載をした。
当て逃げ事件の捜査「面倒だった」警察官3人、口裏合わせ「防犯カメラなかった」|読売新聞オンライン
また、この防犯カメラのデータからある程度のところまで絞り込めたとしても、そこから犯人の特定まで至るには多くの時間を要します。
捜査効率を優先するあまり、こういった手抜き捜査になってしまったものと思われます。
これが当て逃げ事故(怪我人無し)でなく、人身事故であれば、対応した3人の警察官もこんな措置は取らなかったでしょう。
とは言え、警察官、犯罪被害者の心情に寄り添った対応を第一に心掛けるべきであるため、捜査を怠ったことについては厳しく処分されてしかるべきでしょう。
むしろ、今回の処分が「警務部長訓戒」程度なのは「甘いんじゃないの?」とは思います。
警務部長訓戒って?
さて、今回の不祥事の処分内容である「警務部長訓戒」とはどんな処分なのでしょうか?
以下、警務部長訓戒について記載されている兵庫県警の訓令になります。
https://www.police.pref.hyogo.lg.jp/kunrei/data/K6511027.pdf兵庫県警察職員の懲戒の取扱いに関する訓令
第6章 訓戒及び注意
兵庫県警察職員の懲戒の取扱いに関する訓令
(訓戒)
第23条 本部長、警務部長及び所属長(以下「訓戒権者」という。)は、第7条に規定する
事実の調査の結果、懲戒処分に至らない規律違反であり、職員をけん責し、強く将来を戒
める必要があると認めるときは、訓戒を行うことができる。
簡単に言えば、「懲戒処分のレベルではない、厳しく指導する」程度のものと判断されたことですね。
そもそも一番偉い本部長からの訓戒ですらなく、その1ランク下の警務部長からの訓戒なので、ぶっちゃけ大した処分ではないですね。
懲戒処分というのは、ざっくりと言えば
- 免職・・・クビになる
- 停職・・・何か月か出勤停止(だいたいクビに追い込む)
- 減給・・・一定期間給与カット、今後の昇任にも影響
- 戒告・・・県警本部長なりお偉いさんに呼ばれてめちゃくちゃ𠮟られる。今後の昇任にも影響
こんな感じになります。
(懲戒)
第二十九条 職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
引用元 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000261
警務部長訓戒を受けるとどうなるのか?
今回の処分について、大した処分ではないと話したものの、不祥事を起こした警察官は多少なりとも制裁は受けます。
yotaroの今まで見てきた経験則だと、訓戒を受けた警察官は、おそらく今後1~2回程度、ボーナスの支給額がめちゃくちゃ減らされると思います。
30~40万くらい、本来もらえる分が少なくなるのではないでしょうか?
訓戒を受けたことによって、勤務評定がめちゃくちゃ下がり、ボーナスの支給率がガクンと減らされてしまうからです。
気の毒ではありますが、不祥事を起こしてしまった以上、甘んじて受けるしかありませんね。
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