こんにちは、元警察官のyotaroです。
刑事ドラマでは定番である、警察署取調べ室でのカツ丼。
かたくなに口を割らない被疑者に対して、カツ丼を食わせたら、涙を流して自供する。
こんなシーンは、誰もが見覚えがありますよね。
昔は取調室内で被疑者に対して振舞われていたようですが、今の時代ではどうなっているのか?
解説していきます。
今は警察署の取調室でカツ丼を提供するのは違法!
刑事ドラマの定番ともいえる、取調室のカツ丼。
今の時代では完全にNG行為になっています。
被疑者取調べ中の飲食や喫煙は禁止されている
取調室内ではカツ丼だけでなく、飲食や喫煙も禁止されています。
取調室内で禁止されていることは、「監督対象行為」と呼ばれ、下記の規則に定められています。(さらっと読み流してください。)
被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則
(定義)
第三条 この規則において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 被疑者取調べ 取調べ室(これに準ずる場所を含む。以下同じ。)において警察官が行う被疑者の取調べをいう。
二 監督対象行為 被疑者取調べに際し、当該被疑者取調べに携わる警察官が、被疑者に対して行う次に掲げる行為をいう。
イ やむを得ない場合を除き、身体に接触すること。
ロ 直接又は間接に有形力を行使すること(イに掲げるものを除く。)。
ハ 殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること。
ニ 一定の姿勢又は動作をとるよう不当に要求すること。
ホ 便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。
ヘ 人の尊厳を著しく害するような言動をすること。
カツ丼を提供したり、煙草を吸わせるような行為は、
ホ 便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。
の規定にひっかかるため、禁止行為とされているのです。
監督対象行為に抵触するとどうなる?
監督対象行為を行ってしまった警察官は懲戒処分の対象となるうえ、取調を行っていた事件そのものがパーになります。
警察の捜査の過程に違法性があった判断され、証拠としての価値が無くなってしまうからです。
どれだけ他の客観証拠が揃っていようとも、取調べの不手際があれば全て水泡に帰します。
個人的見解:何でもかんでも禁止すると仕事がやりにくくなる
この規則は、被疑者を警察の違法な取り調べから守る趣旨で成立しました。
取調中にかつ丼を奢ったり、煙草を吸わせるなどの便宜供与はNGとなっていますが、被疑者も警察官も人の子です。
取調室で1本の煙草を吸わせてくれた、カツ丼を食わせてくれた、そういった心遣いによって心を通わせ、秘密の暴露に至ったケースも多かったはずです。
私自身、取調べの中で被疑者から
「カツ丼でないの?」
「お巡りさん、留置場入る前にタバコ1本だけ吸いたいな」
等と言われましたが
「すみません、今それやっちゃうとこっちが処分受けちゃうんですよ」
と言って断っていました。
正直人情味が無いというか、素っ気ないんですよね。
留置場でも禁煙化が進んでますし、煙草を利用した被疑者とのコミュニケーションはとりにくくなりましたね。
何でもかんでも監督対象行為にあてはめて禁止してしまうのは個人的に納得がいきませんでしたが、これも時代ですね。
取調べも可視化が進められ、極力録音・録画が推奨されています。
警察官的には録音・録画の余計な手間が増えるし、取調べはやりにくくなるしで、どんどん仕事はやりにくくなっています。